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伊澄へ捧げる詩 その20

2008年08月05日 02:00



    光の詩
 ― ヒカリノウタ ―



この先 どうなるかは分からない

私は淡い茶色のコートを着て “君”と

迷いながら路地裏で 狭い空を見上げていると

何時の間にか、老人が横で壁にもたれて座っている事に気づく。

その老人は、濃い茶色の、煤けたコートを着ている。

さっきからここにいたのだろうか?

すると老人は、話し掛けてきたのだ。

「ほう・・・。昔のワシに似ておる。まだ捨てたもんじゃないね。ほれ、一つやろう」

老人は、ポケットから青い包み紙の小さな飴を取り出し、私に手渡した。

「あんたらは若いが、ワシはもう老いぼれじゃがな。」

「・・・いえいえ、お爺さん、何言ってるんですか。あなただって自信を持てば変わりますよ・・・」

「・・・そうだろうね。じゃあ、お前さんはもっと、そうじゃないかい?」

「・・・・・・え?」

老人は優しく微笑むと、横に置いてあった酒瓶を私に差し出した。

「まぁ、あんたら、ゆっくりしていきましょうや。ほれ、飲め。」

「う?ん・・・。」

「まぁ、飲め、飲め。」

「分かりました・・・別にいいですけど・・・ほんの少しですよ?」

すると老人は、嬉しそうに微笑み、酒瓶を私に手渡した。

今頃だが、変な爺さんだ。
しかし、もちろん軽蔑なんてことはしない。
どちらかと言うと、こういう、ひょうきんな人は好きな方なのだ。
自分自身も、そうなのだから。

私はそう思いながら、何となく、酒瓶の中を覗いてみた。
中にある液体は・・・水銀ではないか?銀色に光り輝いている。

「・・・・・・・・・? これは一体、何ですか?」

私は、とっさに瓶から口を離した。

「いいや。水銀なんかじゃあないよ。あんたに飲ませてどうするのかい。 ・・・あんたの可愛いお連れさんが悲しむだろう?」

最後の方は、聴き取り辛かった。
だが何となく聴こえた。

「・・・今、何て・・・。」

「まぁ気にするな、飲め。」

私は、まるで何かに吸い込まれる様に、酒瓶に入っている液体を飲んだ。
何故、自分がこう易々と、こんなに怪しいものを飲もうとしたのかさえ分からずに。

「・・・水ですか?味は無いですよ?」

無味無臭であった。

「いいや。水なんかじゃあないよ。あんたに飲ませてどうするのかい。」

「・・・じゃあ、これは何ですか?」

「う?ん、強いて言うと、魔法の水かねぇ?」

私は少し、首を傾げた。
すると、老人はこう言った。

「ああ、それと・・・」

老人はポケットをまた探り出す。

少しうんざりもするのだが、私はここで、さっさと歩き出すような性格ではない。
だから、好奇心を持ちつつ、老人のポケットを見つめる。

老人は、黄色い包み紙の小さな飴と、ピンクの包み紙の小さな飴を取り出した。

「この、黄色い包み紙の飴は、あんたらにはまだ早い。それに、自分で手に入れるもんだ。だから・・・」

「・・・・・・・・・!?」

私は、やっと気がついた。
この老人は、さっきから「あんたら」と言っている。
「若いもん」を意味しているのだろうか?

いや。
この老人は・・・違う。
その理由を決めつけることはできないが、しかし、確かに、違うと思った。

「・・・だから・・・隣にいる、お前のお連れさんには、この、ピンクの飴をあげよう。ほれ。」

私は、背筋が凍るような・・・いや、頭の上から爪先まで、残らず凍るような。
そんな感覚に見舞われた。

「・・・“見える”んですか?」

「仲良く手を繋いでいるだろう?可愛らしい子だ。まるで、ワシの愛娘の様だ。」

「あなたは凄い方だ・・・。 彼女が“見える”だなんて・・・。」

「大切な人だね。あんたの頬の涙を見れば分かる。これからも、大切にしておやり。」

・・・・・・!?
何時の間にか、私は涙を零していた。
私はさっきの水で理性が崩れているのだろうか?
いや、崩れてはいない。正気のはずだ。

私は“君”を見た。
“君”は、ピンクの飴を受け取っている。
私はさっきの水で理性が崩れているのだろうか?
いや、崩れてはいない。正気のはずだ。

「ワシの持ってる、この黄色い包み紙の飴は、これからふたりで見つけるんだよ。それじゃあね。」

すべてを見透かした様に、ふたりは歩き始める。
振り返ると、老人はもういなかった。





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